インフラ担当の仕事が見えにくい問題|障害が起きないほど評価されない構造
システムが安定して動いている。デプロイは失敗しない。コストも想定内に収まっている。それなのに評価面談では「今期は特に大きな動きがなかったね」と言われる。
インフラ担当の成果は、何も起きなかったことです。ここが評価制度と根本的に相性が悪い。私は評価を付ける側にいたので分かりますが、アプリ側の「機能をリリースした」に比べて、インフラ側の貢献は上位者に説明しづらいのが実情です。この記事では、その構造と打ち手を整理します。
- 「何も起きない」が評価されない仕組み
- インフラの仕事を数字に変える具体的な指標
- クラウドコストの削減が最も語りやすい理由
- 採用側がインフラ経験をどう読むか
なぜ安定運用は評価されないのか
評価制度は、基本的に変化を記録する作りになっています。リリースした、売上が伸びた、機能が増えた。どれも「前と比べて何が増えたか」です。
インフラの成果は逆で、「前と同じ状態を保った」ことにあります。稼働率99.95%を維持した、という事実は、去年も同じ数字だったなら変化として認識されません。むしろ、大きな障害が起きて徹夜で復旧したほうが記憶に残り、評価面談で話題になります。
ここに皮肉があります。きちんと設計して障害を起こさない人より、障害を起こして派手に復旧する人のほうが目立つのです。この非対称は、障害対応の側から見ると別の形で現れます。詳しくは障害対応ばかりのエンジニアは損?火消し経験を市場価値に変えるに書きました。
インフラの仕事は、実は数字にしやすい
見えにくい仕事と言われますが、実際にはアプリ開発より数字が取りやすい領域です。すでに監視ツールや請求画面に数字が並んでいます。
| 領域 | 使える指標 | どこから取るか |
|---|---|---|
| 可用性 | 稼働率、ダウンタイムの累計分数 | 監視ツールのSLOレポート |
| デプロイ | 所要時間、失敗率、週あたり回数 | CI/CDの実行履歴 |
| コスト | 月額、リソース単位の内訳 | クラウドの請求ダッシュボード |
| パフォーマンス | レスポンスタイム、エラー率 | APMツール |
| 運用負荷 | 手作業の時間、アラート件数 | 作業記録、通知数 |
この中で最も伝わりやすいのがコストです。理由は単純で、金額は誰にでも意味が分かるからです。
「使われていないリソースを整理し、インスタンスタイプを見直して、月額のクラウド費用を38万円から22万円に下げました。年間で約190万円の削減です」
この一文は、評価者が上位者にそのまま説明できます。技術的な詳細を理解してもらう必要がありません。インフラ担当が最初に取るべき数字は、可用性よりコストだと私は考えています。
採用側から見たインフラ経験
採用の現場では、インフラを見られる人は常に不足しています。特に次の経験は評価が高いです。
- 本番環境の設計と運用を、立ち上げから通して見た経験
- オンプレからクラウド、あるいはクラウド間の移行を完了させた経験
- 監視とアラートを設計し、運用に乗せた経験
- コストを把握し、継続的に最適化した経験
- IaCでインフラをコード化し、再現可能にした経験
問題は、本人が「運用を回していただけ」と説明してしまうことです。回すという言葉は、作業として聞こえます。実際にやっているのは設計判断の連続なので、そこを出す必要があります。
言い換えの例です。
- 「サーバーの面倒を見ていた」→ 可用性目標を定め、それを満たす構成と監視を設計・運用した
- 「コストを見ていた」→ リソース使用状況を分析し、年間190万円のコスト削減を実施した
- 「移行をやった」→ 無停止での移行計画を立て、切り戻し手順込みで完了させた
- 「監視を入れた」→ 検知漏れと誤検知の両方を減らす閾値設計を行った
社内での見え方を変える
定期レポートを出す
月に一度、可用性、コスト、デプロイ回数を数行でチームに共有します。継続すると、変化が可視化されます。何もしなければ「同じ状態」ですが、レポートがあると「維持されている」という事実が記録に残ります。
期初の目標を数字で置く
「安定運用」ではなく、「デプロイ所要時間を30分から10分に短縮」「クラウドコストを年間15%削減」のように、増減で測れる形にします。評価シートに乗る形かどうかが分かれ目です。
障害が起きなかった理由を説明する
大きな障害が起きなかった期には、「今期はこの3つの対策を入れたので、去年発生していた型の障害は起きていません」と能動的に報告します。黙っていると、何もなかったことになります。
それでも制度上インフラの貢献が評価されない会社はあります。その場合、同じスキルがSREとして正式なポジションで募集されているかを見てみると、自分の市場での立ち位置が分かります。
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よくある質問
Q. クラウドのコスト削減は、自分の裁量ではできません A. 実行できなくても、分析して提案した事実は実績になります。「使われていないリソースを洗い出し、年間190万円削減できる提案をまとめた」という形で語れます。採用側は実行の権限より、課題を見つける力を見ています。
Q. オンプレ環境しか経験がなく、市場価値が不安です A. オンプレの設計経験は、クラウドでも通用する部分が多いです。ネットワーク、冗長化、容量設計の考え方は共通しています。不安があるなら、個人でクラウドの検証環境を作り、移行の設計を自分で書いてみると、面接で話せる材料になります。
Q. 監視の数字が整備されていない環境ではどうすればいいですか A. 整備すること自体が成果です。「計測できていなかった状態から、可用性とコストを可視化した」は、それだけで改善の実績になります。まず1つの指標を取るところから始めてください。
まとめ
インフラの仕事が評価されにくいのは、成果が「起きなかったこと」だからです。
- 評価制度は変化を記録する作りなので、維持は認識されにくい
- 数字は監視ツールと請求画面にすでにある。取りにいくだけ
- 最も伝わるのはコスト。金額は誰にでも意味が分かる
- 採用側では不足している領域。「回していた」ではなく設計判断として語る
今月のクラウド請求画面を開いて、上位3つのコスト項目を確認してみてください。そこが最初の数字になります。