小規模開発会社で年収が上がりにくい構造|実力以外の壁を見る
社員20人ほどの開発会社で、5年働いている。技術的には中心メンバーになった。それでも年収は入社時から60万円しか上がっていない。社長との距離は近く、評価されている実感もある。ただ、金額だけが動かない。
小規模な会社には、実力とは別の次元で年収の上限を作る要因がいくつもあります。私は採用側として、このタイプの会社から移ってくる方を何人も見てきました。構造を整理します。
- 会社規模に由来する年収の壁4つ
- 小規模企業にいることの本当のメリット
- 社内で試せる打ち手
- 動くかどうかの判断目安
会社規模に由来する4つの壁
1. 給与テーブルがない
社員数が少ないと、等級制度を作るコストに見合いません。結果、給与は社長や役員の裁量で決まります。裁量が悪いわけではありませんが、基準がないので交渉の土俵が作れません。 「次の等級に上がるには何が必要ですか」という問いが成立しない状態です。
2. 原資が薄い
受託中心の小規模会社では、粗利率が低く、そこから全社員の人件費を出します。1人の年収を100万円上げると、会社の利益がそのまま100万円減ります。大企業と違い、緩衝材がありません。仕組みはエンジニアの給料はなぜ会社によってここまで違うのか|利益構造と単価の裏側にまとめました。
3. 昇進の先がない
役職の階段が2〜3段しかないため、数年で上限に届きます。上が詰まっていれば、実力があっても動きません。
4. 比較対象が社内にいない
同じ職種の人が少ないと、自分の水準が分かりません。「うちではこれが普通」が基準になり、外との差に気づきにくくなります。
小規模企業にいることのメリットは確かにある
ここは公平に書いておきます。小規模な会社でしか積めない経験があり、それは市場で評価されます。
- 要件定義から設計、実装、運用まで一通り経験できる
- 技術選定に関われる機会が多い
- 意思決定が速く、提案が通りやすい
- 事業側との距離が近く、プロダクト判断に関われる
特に一気通貫の経験は、分業が進んだ大企業では積めません。転職市場ではこれが強みになります。実際、小規模企業出身の方が、大手に移って年収が200万円上がるケースは珍しくありません。
問題は、その経験が今の会社の給与には反映されないことです。経験は積み上がるのに、年収だけが横ばいという状態が起きます。
社内で試せる打ち手
制度がないなら、作ってもらう方向に動く余地はあります。
1. 会社の数字を把握する
売上と利益、自分が関わった案件の金額を確認します。「自分が年間いくらの売上に貢献しているか」が分かると、話が具体的になります。社長との距離が近いのは、この点では有利です。
2. 給与の根拠を聞く
「うちでは給与はどう決まっていますか」と率直に聞きます。裁量で決まっているなら、そう答えが返ってきます。それ自体が重要な情報です。
3. 単価や利益率の改善を提案する
原資が薄いのが問題なら、原資を増やす側に回る提案が有効です。「この案件は保守契約に切り替えたほうが利益が安定します」といった提案は、小規模な会社ほど通りやすいです。
4. 制度を作る側に回る
等級の叩き台を自分で作って提案するという手もあります。会社としても、人が増えるタイミングでは必要になります。通れば、自分の昇給の根拠も同時に作れます。
交渉の材料の揃え方はエンジニアが昇給交渉前に用意すべき材料|感情ではなく比較で話すにまとめています。
動くかどうかの判断目安
次の状態がそろっているなら、社内での改善は期待しにくいです。
- 給与の決まり方を聞いても、明確な答えがない
- この3年、昇給が定期昇給の範囲を超えていない
- 会社の売上が横ばい、または減少している
- 自分より上の役職が埋まっていて、空く見込みがない
- 外の求人のレンジ下限が、自分の年収を上回っている
最後の項目を確認するだけでも、判断材料になります。小規模企業で積んだ一気通貫の経験は、レンジの高い会社でこそ値段がつきます。 会社に不満がなくても、相場を知っておく意味はあります。
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よくある質問
Q. 社長と距離が近いので、交渉しづらいです A. 距離が近いことは本来有利です。ただ、情に寄せた話は避けてください。会社の数字と自分の貢献、外の相場という事実ベースで話すと、関係を壊さずに進められます。
Q. 会社が小さいと、転職で不利になりませんか A. 社名の知名度は影響しますが、一気通貫の経験はプラスに働きます。不利になるのは、規模ではなく「何を判断してきたか」を語れない場合です。
Q. 会社を大きくする側に回るという選択はどうですか A. 有力な選択肢です。ただし、株式や役員としての参加があるかどうかで、リターンがまったく違います。給与だけで報われる形かどうかは、先に確認してください。
まとめ
小規模開発会社で年収が上がりにくいのは、実力ではなく会社規模に由来する構造によるものです。
- 給与テーブルがないと、交渉の土俵が作れない
- 原資が薄く、1人の昇給が会社の利益に直結する
- 一方で、一気通貫の経験は市場で明確に評価される
- 経験は積み上がるのに年収が横ばい、という状態が起きやすい
まずは自分に近い求人を3件読んで、レンジの下限と自分の年収を比べてみてください。差がはっきりすれば、判断もしやすくなります。