ITエンジニアの給料が低いのはなぜ?会社によってここまで差が出る


「エンジニアは稼げる職業」と言われる一方で、実際には年収400万円台で頭打ちになっている人が少なくありません。海外の給与水準と比べて落胆した経験がある方もいるはずです。

この差は個人の能力だけで説明できるものではなく、日本のIT業界がどういう構造で仕事を回しているかに強く影響されています。私は採用側として業界をまたいで候補者を見てきました。その視点から、何が効いているのかを整理します。

📌 この記事でわかること
  • 日本のエンジニア給与が上がりにくい3つの業界要因
  • 業界・事業形態による年収差の実態
  • 個人として動かせる部分と動かせない部分
  • 最初に確認すべきこと
業界の構造のイメージ

業界全体で給与が上がりにくい3つの要因

1. ユーザー企業の内製率が低い

日本では、システムを使う会社が自社でエンジニアを抱えず、ベンダーに発注する形が長く主流でした。その結果、エンジニアの多くがベンダー側に所属しています。

ベンダーの売上は受注額で決まり、エンジニアの給与はその中から支払われます。システムが生む価値そのものは発注元の会社に残るため、作った側には還元されません。 一方、ユーザー企業が内製している場合、エンジニアは価値を生む側に立つので、給与の上限が変わります。

2. 多重下請け構造

発注から実際に手を動かす人までの間に、何社も挟まる構造です。各社がマージンを取るため、末端に届く金額は目減りします。同じ現場で同じ仕事をしていても、所属会社の位置で年収が変わります。

商流と年収の関係はエンジニアの給料はなぜ会社によってここまで違うのか|利益構造と単価の裏側で詳しく扱いました。

3. 労働市場の流動性が低かった

年功と勤続を前提にした給与体系では、転職で年収を上げる動きが起きにくくなります。動かない人が多いと、会社側も引き止めるために給与を上げる必要がありません。近年は流動性が上がってきましたが、まだ「動かないと上がらない」状態が多くの会社で続いています。

事業形態による差の実態

同じ職種でも、どこに所属しているかで水準が変わります。

所属特徴年収の傾向
二次請け以下のSES・受託売上が単価で固定。改善しても増えない上がりにくい
一次請けの受託開発粗利は確保できるが、価値は発注元に残る中位
事業会社の情報システム部門コスト部門として扱われることがある部門の位置づけ次第
事業会社の内製開発チーム作ったものが事業の売上に直結高め
自社サービス・SaaS粗利率が高く、原資が厚い高め
外資・グローバル企業本国の給与水準が反映される最も高い

重要なのは、この差は本人の技術力とほぼ無関係に発生するという点です。同じ人が所属を変えるだけで、年収が200万円変わることは実際にあります。

発注が連なる構造のイメージ

個人として動かせる部分、動かせない部分

切り分けておかないと、変えられないことに労力を使うことになります。

動かせないもの

  • 業界全体の内製率
  • 自社の商流上の位置
  • 会社の粗利率
  • 会社の給与テーブルの上限
  • 管理職ポストの数

動かせるもの

  • 自分がどの事業形態の会社にいるか
  • 役割の広さ(実装だけか、設計・運用・判断まで見るか)
  • 希少性のある領域の経験を積むか
  • 自分の実績を説明できる形にしているか
  • 外の相場を知っているかどうか

動かせるもののうち、最も効果が大きいのは1つ目です。 技術を磨くより、立っている場所を変えるほうが年収への影響が大きい、というのが業界の実情です。ただし、場所を変えるには2つ目以降が必要になります。

最初に確認すべきこと

今の年収が構造由来なのか、評価由来なのかを切り分けるところから始めます。

1. 自社がどの事業形態に当たるかを確認する

上の表のどこに当たるかを見ます。ここで下のほうなら、社内での昇給には天井があります。

2. 同じ経験の求人を5件読む

自分に近いポジションの年収レンジを見ます。レンジの下限が今の年収を上回っているなら、それが構造差です。

3. 自分の役割の広さを棚卸しする

実装だけか、設計や運用、判断まで関わっているか。広がっているなら、それは値付けの材料になります。棚卸しの観点はエンジニアの市場価値はどう決まる?採用側が実際に見ているポイントにまとめました。

IT転職エージェント@PRO人

ITエンジニアの転職に特化したエージェント「PRO人」。専任のキャリアアドバイザーが、経歴やスキルを踏まえた具体的な求人・条件面を提示してくれます。

  • IT・Web業界の転職支援に特化
  • 経歴・スキルに合わせた求人を紹介
  • 年収交渉や条件面のすり合わせも相談できる
  • TechGoとは別の視点で市場価値を確認できる
PRO人にキャリア相談する

よくある質問

Q. 日本にいる限り、海外並みの年収は無理ですか A. 外資系企業の日本法人や、海外向けにリモートで働く形なら水準は上がります。ただし求められる英語力と成果の水準も上がります。国内でも、自社サービス企業の上位レンジは1000万円を超えます。

Q. フリーランスになれば年収は上がりますか A. 単価は上がることが多いですが、社会保険や福利厚生、案件が途切れるリスクを差し引く必要があります。商流の位置を上げる手段としては有効ですが、額面だけで比較しないほうが安全です。

Q. 今の会社で技術を磨き続ける意味はありますか A. あります。ただ、それが今の会社の年収に反映されるかは別問題です。磨いた技術は、場所を変えるときの材料になると考えたほうが、期待のずれが起きません。

まとめ

日本のITエンジニアの給与が上がりにくいのは、内製率の低さ、多重下請け、流動性の低さという業界要因が重なっているためです。

  • 価値を生んだ場所と、それを回収する場所がずれている
  • 事業形態による差は、本人の技術力とほぼ無関係に発生する
  • 動かせるもののうち最も効果が大きいのは、どの形態の会社にいるか
  • ただし場所を変えるには、役割の広さと説明できる実績が要る

まずは自社がどの事業形態に当たるかを確認し、同じ経験の求人を5件読んでみてください。構造差の大きさが具体的に見えてきます。

関連記事